2015.09.28

シリコンバレーを知らずして起業するべからず

学習院大学経済学部経営学科 教授 / ディミトリ・リティシェフ

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学習院大学経済学部経営学科 教授 / ディミトリ・リティシェフ

学習院大学経済学部経営学科 教授
1966年ソ連生まれ、中学時代に米国に移住。マサチューセッツ工科大学(MIT)電気工学・コンピューターサイエンス学部卒業、同修士課程修了後、ボストン郊外にて起業。1990年にシリコンバレーに移り、技術開発企業勤務を経て大学院に進む。カリフォルニア大学バークレー校経済学博士課程修了。1999年にシリコンバレーにてネット上語学教育サービスのベンチャー企業を立ち上げ、約5年間CEOを務める。2004年に学習院大学に着任。個人ならびに企業の戦略的行動、ベンチャー企業論、制度経済学を中心に研究活動を行っている。『私も起業できる? ベンチャーで働く? アメリカ人との本音トークでわかるシリコンバレー流キャリアと財産の築き方』(アマゾン・キンドル)を執筆。
近著 http://www.amazon.co.jp/dp/B00QGOLOMW
Twitter https://twitter.com/DR_JPN

 

 

 

【ベンチャー企業が日本であまり知られていない】

大学生時代はどのように過ごしていましたか?

 コンピューターサイエンス専攻だったのでプログラミングやアルゴリズムの勉強をしていました。それと同時に、ベンチャーや起業関係のイベントにも顔をだしていましたね。まだそれほど有名ではなかったビル・ゲイツの講演なども聞きに行っていました。友達と色々な起業アイデアをよく議論していた記憶もあります。

卒業してすぐに起業されていたそうですが、きっかけは何かありましたか?

 在学中にIBMの研究所で実習生として働いていました。勉強になったことはたくさんあったのですが、一方でどこかつまらないとも感じていました。もっと刺激のある職場がないものかと漠然と考えていて、ベンチャー企業の数社に就職面接を受けました。ちょうどそのとき、日本に留学していた同級生が帰ってきて、日本について教えてくれたんです。日本人は英語教育にお金と時間をたくさん使っているのに発音が苦手だと。発音を評価したり直したりする商品があれば絶対売れるはずだといった話をしました。私は当時音声認識のアルゴリズムを修士論の研究としてやっていたので、彼と一緒に会社を始めました。

様々な起業家にインタビューしましたが、やはり自分が何に対してわくわくするかを考えて仕事を選ぶことが大切ですよね。

 そうですね。ただ、問題はベンチャーの世界が日本ではよく知られていないということです。ベンチャーについてよくわかっていないまま、まわりの価値観に流されて、エスカレーター式で社会人になってしまう人が多いのです。一般論としては大企業や公務員といったキャリアが魅力的に見えるかもしれませんが、実際に満足できるキャリアは人によって違うのです。就活生みんながベンチャーに行けばいいとはもちろん思わないけれど、一つの選択肢としてベンチャーを検討したほうがいいでしょう。ただ、先入観や誤解を取り除いて、ストックオプションとか、投資家とのリスク分担などについて具体的に理解しておかないとベンチャーをちゃんと検討することができません。だから私はこのようなベンチャーの基礎知識をゼミ生に教えていますし、全国の大学生や若い社会人の参考となるように電子本を出しました。その本は教科書的な説明ではなく、シリコンバレーの典型的な人物との対話という読みやすいスタイルにしました。

著書を拝読して、気になる話がありました。シリコンバレーではベンチャーが職場としてリスキーだと思われていないし、不安定なベンチャーで働いている男が婚活を普通にできるようです。日本の就職観とは大きく違いますね。

 アメリカでは大企業の社員でも解雇されるケースも自ら転職するケースも珍しくないのです。どうせ数年後に転職するだろうと思うアメリカ人から見れば、ベンチャーは就職先として特にリスキーには見えないし、むしろストックオプションで金持ちになるチャンスがつくから大手企業より評価されることもあるのです。そして、婚活でもアメリカ人男性の所属している会社よりも彼自身がよりよい転職ができるポテンシャルを持っている方が重要視されます。

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