2014.06.18

人は生まれながらアーティストであり表現者

執筆家|ライフスタイルデザイナー / 四角大輔

四角さん アイキャッチ

執筆家|ライフスタイルデザイナー 四角大輔(よすみ・だいすけ)

ノイズレスな環境とオルタナティブな生き方を求め、
ニュージーランドの原生林に囲まれた湖畔で水と食料を自給しながら、
デジタルテクノロジーを駆使し、独自のクリエイティブ論とオーガニック思想を発信する
〈21世紀型|森の生活者〉。
〈大自然|NZ〉と〈都市空間|TOKYO〉という、対局な地を往来しながら、
ブランドプロデュース、NPO、アーティスト・インキュベーション、ITスタートアップ、商品開発、アウトドア、講演などの分野で活動。
『朝日新聞』をはじめ、クリエイターズblog『ハニカム』、エコ雑誌『ソトコト』、
登山雑誌『PEAKS』、アウトドア雑誌『Field Life』などで連載を持つ。
〈Fly Fishing〉と〈バックパッキング〉をライフワークとし、
アウトドア系雑誌では頻繁に表紙にも登場。  
また上智大学非常勤講師を務め、複数の大学で「ライフスタイルデザイン」をテーマとした講義を行う。
前職はレコード会社プロデューサー(7度のミリオン・CD売上2千万枚を記録)。
著書『自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと』がベストセラーに。

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【“自分の心や、人生の深い部分とつながること” それが絶対的な武器になる。】

四角さんは、プロデューサーとして多くのアーティスト・プロジェクトを成功させてきました。しかし、四角さんもコンプレックスを抱えられていたそうですが、どのように克服されたのですか。

 小さい頃から集団行動が苦手で、人前に出ると極度に緊張し、赤面症やチック症に悩んでいた。〝自分を見張っているもう一人の自分〟みたいな存在にいつも縛られているような脅迫感があったんだ。

 でも30代の頃、一つのことがきっかけで突然克服できた。

 担当してたある大好きなアーティストのことを、どうしても伝えたくて、気がついたら、我を忘れて一生懸命プレゼンテーションをしている自分がいた。言葉は拙いし、プレゼン技術は恥ずかしいくらい低レベルだったけど、自分の心にスイッチが入り、無意識のうちに熱く語っていたんだよね。

 そうやって、自分の「心の縛り」から自由になれたあと、次はプレゼン上手な先輩の言葉使いや話し方を真似したり、コンパクトに話すように訓練したり、プロの講演を覗いたり、知恵熱が出るくらい研究した。それまでも、ハウツー本を読んだり、いろんな形で勉強してたけど、まったく身に付かなかった。

 この体験から、「心」が起動してないのに、「頭」だけを先に鍛えても意味がない、と痛感した。

 いま思うと、克服したその瞬間は、 「Studious(ステュディオス)」な状態だったんだと思う。ステュディオスとは、ラテン語で「人が何かに夢中になって集中している状態」を意味する言葉だけど、そういう時こそ、どんな人間も特別な力が引き出されるんだと確信できた。

学生時代を振り返って、これだけは言える「強み」というのはありましたか?

 僕の場合は釣り。
「えっ!釣り?」って思うかもしれないけど、新卒で入ったソニー・ミュージックの面接では釣りの話しかしてないの(笑)。

 さっきも話したように、当時はまだ赤面症で、人前で話すのは苦手だった。でも、大好きな釣りのことだけは誰にでもわかりやすく、魅力的に語れるようになっていたんだ。

 就職活動では「自分をアピールしなさい」って言われて、人によっては、焦って「ネタになりそうなこと」を探したり、「自己PR出来そうな活動」を慌てて始めるけど、そういう浅いアピールはまったく無駄で、通用しない。

 僕もレコード会社で面接官をやってたから断言できるけど、とってつけたような体験やストーリーは、面接官に全部バレる。こっちはプロだからね。

 サークルの部長をしていたとか、ボランティアで社会貢献をしていたとか、そういった〝わかりやすく立派な事実〟を並べたてても、それだけじゃ何も伝わらない。それから〝何を感じたか、それが自分の人生にどんな影響を与えたか〟を深く、かつ簡潔に語れないと意味がない。

 本当の「強み」とは、自分が心の底から「ステュディオスになれること」か、「人生のルーツにつながること」にしか存在しないんだ。 その二点をクリアしていれば、一般的に面接で役に立ちそうもない「こんな稚拙なことが?」と思うようなことでも武器になる。それが僕の場合は釣りだったんだから(笑)。

 学生時代にやって欲しいのは、自分の〝好きなこと何か一つ〟をとことん極めること。それがあなたの「強み」につながるんだ。
 好きな事だからのめりこめるし、没頭できるし、驚くほど高い集中力を発揮できる。つまり「ステュディオス」になれる。
 その状態に入ることができれば、誰もが高い能力を発揮でき、その人に眠る可能性を極限まで高められる。つまり、あなたが本来持っている独創性が、最大限まで引き出されることになる。

 次に僕がやったのは、その「独自の強み(=釣り)」を他人に伝えるための練習。ここで初めて「頭」を使った。
 ポイントは、「そのテーマにまったく興味がない人」にも簡潔にわかりやすく、かつおもしろく伝えること。そのために僕は、頭痛がするくらい徹底的にトレーニングしたんだ。

 この段階で、話し方の技術本なども読んだ。そして隙あれば、恋人、友達、バイト先の大人、同じ授業をとる顔見知りなどを相手に語る練習をしていた。
 ポイントは、なるべくシンプルな言葉で、短時間で伝えること。そうしているうちに、面接官相手でも、同じようなテンションで、コンパクトに語れるようになっていった。

 まとめると、まず〝自分の心や、人生の深い部分とつながること〟を見つけて、それを極める。
 そして、それを誰にでもわかるシンプルな言葉だけで、短時間で語れるスキルを身に付けること。

 しつこく繰り返すけれど「心」が最初で、次に「頭」。この順番は絶対だ。
 この〝二段階〟を経て、初めてあなたの強みが〝絶対的な武器〟になるんだ。

就活が自分探しになっているような気もします・・・・。

 就職活動のタイミングで何をしたいか明確になっていないのは、当然だと思う。20歳前後で、自分自身を完全に把握し、自分が歩むべき道が見えている人なんてまずいないはず。
 若くしてやりたいことがハッキリしていて、20歳そこそこで実際にその仕事に就けている人なんて、イチロー選手みたいな、10万人に一人くらいの選ばれた存在だけ。

 そもそも、新卒で入った会社に一生勤める人なんて、もうほとんどいない。
 強く言いたいのは「就職活動で一生が決まってしまう」といった間違った思い込みを捨てて、自分を追い込み過ぎないで欲しいということ。

 もう一つ言いたいのは、「正社員」にこだわりすぎないこと。
 レコード会社でプロデューサーをしていた時、僕の周りで一線級の活躍をしていた人の多くが「新卒の正社員枠」という、いわゆる〝正規ルート〟ではなく、アルバイトから上がってきた人や、まったく異業種からの転職組だった。
 つまり〝非正規ルート〟なんだ。

 彼らに共通していたのは、人が嫌がる雑務でも、退屈なルーティンでも、一生懸命に取り組んでいたこと。そして、創意工夫ができないか、より効率化できないかを、誰よりも考え尽くしていた。
 つまり、「この仕事をやりたいんだ!」という高いモチベーションを持って常に行動していた。
 そんな姿を見た先輩達が、少しづつ少しづつ、彼らにチャンスを手渡していった。
 もし「この会社(この業界)」に絶対に入って自分にしかできない仕事をしたい、と心の底から確信できているのなら、仮に就職活動で落とされても、バイト、派遣、タダ働きなど〝非正規ルート〟はいくらでもある。
 どんな形でもいいから、そこに潜り込んで欲しい。その気迫さえあれば、必ずチャンスはやってくるから。

 最初から本当にやりたいことに就ける人なんてほとんどいない。
 まずは愚直になって、目の前のこと、与えられたことに全力で集中して欲しい。そうすることで、「やりたいこと」は自分で引き寄せられるものだと思う。

 それに、自分探しではなく〝自分創り〟だと意識を変えて欲しい。そして、自分創りは就職活動から突然始めるものじゃない。
 ある意味、〝自分創りは生まれた瞬間から始まっている〟はず。
 そして、社会に出て働くという行為は、自分創りをより深く加速させることを意味する。
 僕は、自分創りに必要なのは〝居場所探し〟だと考えている。人生そのものが〝自分を創る行為〟だし、生きるということは〝自分にとってのベストな居場所探しの旅〟だと僕は思っている。

自己PRということで、四角さんの持論について教えて頂けますか?

 たとえば家を出る前、「今日はどんな服を着よう、髪型どうしよう」って誰もが考える。これも立派な自己PR。

 こういう話をすると、「いや、俺はオシャレとかはよくわからないから」っていう学生が出てくる。
 でも、選んだ理由って必ずあるはず。
 着心地がいいから、気分的にこの色だ、雨が降りそうだからとか、必ず大小さまざまな理由があって選択してる。
 そういう小さな選択の一つ一つが集まり、結合して「自分を正しく表現する活動」につながるんだ。つまりそれが自己PR。僕は、自己PRはセルフブランディングと同義語だと思ってる。

 自己PR、自己表現、セルフブランディングって言われると、賢そうな言葉や難しい技術を使って、なにかスゴいアピールをしなくちゃいけない、と誤解している人が多いけど、そうじゃない。
 普段使い慣れていない言葉で、他人から聞いた話をしても、全く伝わらないよね。だから、〝半径1.5メートル以内の言葉〟だけを使うようにして欲しいんだ。つまり、自分の体験ベースのことだけを、手の届く範囲の言葉を使って表現せよ、と言いたい。

 自己PRやセルフブランディングの本当の意味は、〝ありのままの自分をちゃんと表現する〟ことだからね。
 だって〝自分を正しく伝えること自体がとても難しい〟んだから、ほとんどの人ができていないんだから。
 そう考えると、自分を大きく見せようとする行為って、まったく無意味だとわかるよね。

 僕自身も、講義や著書では、難しい言葉は一切使わないようにしてる。
 僕自身が経験したこと、その経験を通じて感じたことを、なるべく平易な言葉を駆使して、できるだけライブ感が伝わるようにしたいと思っているから。

 英語でも、“make”とか “get ”のような中学生レベルの単語で、かなり多くのことが表現できる。日本語も同じで、心から伝えたいこと、体験したことをしっかり心で感じて、自分の血肉となっていたら、普段使っている言葉だけで十分伝えられるんだ。

たしかに四角さんの話すことはシンプルでわかりやすいです。人って難しい単語やアカデミックなワードを聞くだけで、この人すごいっていう圧倒されますよね。

 多くの人の心に届く言葉ってシンプルだよね。たとえば、スティーブ・ジョブズのプレゼンや、オバマ大統領のスピーチの英語って、とてもわかりやすい。

 TEDの一流のスピーカーたちが使う言葉や言い回しもすごくシンプル。
 難しい単語を勉強して、アカデミックな手法でプレゼンことがカッコいいと思われがちだけど、それって人を煙に巻いているだけで、ちっとも伝わっていない。
 自分を大きく見せるための、難解な単語や大仰な表現は必要ないんだ。

 

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